一言でいえば、呉越同舟とは、仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせることを表す四字熟語である。
監修:桐生志乃(元祝辞・弔辞代筆者/漢字検定1級取得)
①「呉越同舟」の読み方・意味
「呉越同舟」の読み方はごえつどうしゅう。仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせたり、行動を共にしたりすることを意味する。また、敵対する者同士でも共通の困難や利害のためには協力し合うことのたとえとしても使われる言葉である。
| 読み方 | ごえつどうしゅう |
| 意味 | 仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること。また、敵対する者同士でも共通の困難には協力し合うこと。 |
| 分類 | 四字熟語(人間関係・状況) |
②「呉越同舟」の由来・出典
中国の兵法書『孫子』の九地篇に由来する。春秋時代、呉と越は長年敵対し戦いを繰り返していたが、両国の人間が同じ舟に乗り合わせて嵐に遭遇すれば、互いに助け合うだろうという記述があり、そこから敵対する者同士が同じ場所や境遇に置かれることを表す言葉として使われるようになったとされる。
③「呉越同舟」の使用例(例文)
- 【ビジネス】ライバル企業同士が業界の危機に際して手を組むとは、まさに呉越同舟だ。
- 【日常会話】仲の悪い二人が同じチームになるなんて、呉越同舟もいいところだ。
- 【エッセイ】災害時には呉越同舟で助け合う人々の姿に、心を打たれることがある。
④現場で見た「呉越同舟」の使いどころ
以前、社内報の記事を添削したことがある。部署間の対立が続いていた二つのチームが、大型プロジェクトのために協力することになった経緯を紹介する記事で、「呉越同舟の精神で乗り越えた」という表現が使われていたのだが、社内報という性質上、対立があった事実を強調しすぎると角が立つ懸念があった。「立場の違いを越えて力を合わせた」という表現も併記することを提案したところ、前向きな印象の記事に仕上がった。呉越同舟という言葉は的確で印象的だが、使う場面によっては過去の対立を強調しすぎてしまう場合があると改めて感じた出来事だった。
⑤ビジネスシーンでの使い方・注意点
ビジネスの場では、対立関係にあった企業や部署が共通の目的のために協力する様子を表す際に使われることが多い。「呉越同舟で協力する」「呉越同舟の関係にある」という形で用いられる。注意したいのは、単に仲の悪い者同士が同じ場にいるだけの状況にも使えるため、協力しているのか反目し合っているだけなのか、文脈で意味が変わる点である。
⑥類義語との違い
呉越同舟と近い意味を持つ言葉に「同床異夢(どうしょういむ)」がある。同床異夢は、同じ立場や行動を共にしていても、それぞれが異なる考えや目的を持っていることを表す言葉で、同じ場に居合わせるという点で共通している。ただし呉越同舟が敵対関係にある者同士の同居や協力を表すのに対し、同床異夢は表面上は協調していても内心の思いがばらばらである点に重きを置く表現である点が異なる。
⑦対義語
呉越同舟の対義語としては「意気投合(いきとうごう)」が挙げられる。意気投合は、互いの気持ちや考えがぴったりと合い、すぐに親しくなることを表す言葉で、敵対する者同士が同じ場に置かれる呉越同舟とは対照的に、気の合う者同士が自然と結びつく様子を示している。
⑧一文〇×テスト
Q. 長年のライバル企業同士が、業界全体に関わる規制強化の動きに対抗するため、一時的に手を組んで対応にあたったことを「呉越同舟で対応した」と表現するのは、正しい使い方である。
正解は「〇」!
呉越同舟は、敵対する者同士でも共通の困難や利害のためには協力し合うことを表す言葉である。長年のライバル企業同士が、業界全体に関わる課題に対応するために一時的に協力する状況は、まさに呉越同舟の典型的な使い方であり、この表現は適切である。
不正解…正解は「〇」
呉越同舟は、敵対する者同士でも共通の困難や利害のためには協力し合うことを表す言葉である。長年のライバル企業同士が、業界全体に関わる課題に対応するために一時的に協力する状況は、まさに呉越同舟の典型的な使い方であり、この表現は適切である。
⑨まとめ
呉越同舟は仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせることや、敵対する者同士でも共通の困難には協力し合うことを表す四字熟語である。中国の兵法書『孫子』に由来するとされ、対立関係にある者同士の協力や同居を表す際に幅広く使われる。文脈によって協力の意味にも単なる同席の意味にもなるため、使う場面には注意が必要である。今回紹介した由来や使い方を参考に、正しく使ってほしい。

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